「ピタゴラスの定理」だけで「時空の歪み」が計算できちゃう!?よくわかるアインシュタインの特殊相対性理論

最近、某動画サイトの某哲学系チャンネル(「ぴ●●ー●速報」)で人間の(?)排泄物を用いて相対性理論を説いている動画を見て感化されたので(ものすごくよくできてた!)、もうちょっとだけ数学的な説明も欲しいかな、と思い、この記事を書くことにしました。

物理学専攻の大学生などが足を踏み入れるような小難しい「ローレンツ変換」や「座標」などの用語はすべて省いたので正確性には欠ける部分が多々見受けられるでしょうが、ご了承ください。ごくありふれた説明ではあるのですが、いつかどこかの誰かの役に立つかもしれない、そんな思いを込めて書いてみました。

「ピタゴラスの定理」と「距離=時間×速度」の簡単なおさらい

正三角形ABCがある(図1)。ABとBCが直角の場合、次のような式が成り立つ:

AC2 = AB2 + BC2

これをピタゴラスの定理と呼ぶ。

図1:正三角形ABC。赤と青の四角形の面積の和は黄色の四角形の面積に等しい。

「距離」d(はdistance(ディスタンス)から来ている)は「速度」v(はvelocity(ヴェロシティー)から来ている)かける「時間」t(はtime(タイム)から来ている)。以下の式が成り立つ:

d = v × t

これだけわかれば特殊相対性理論がわかるのだ。では行ってみよう。

思考実験

まずは、なんの変哲も無い箱を想像してみよう。箱の高さをhメートル(高さは英語でheight(ハイト)なのでh)にしよう(横幅などはなんでもよい)。箱の内側の天井と床には、互いに向き合った鏡がついてるように想像しよう。つまり天井の鏡には床の鏡が映り、床の鏡には天井の鏡が映っている状態だ。箱はこれで完成だ。箱には友人を一人入れておこう。

実は下の鏡にはレーザーポインターのような装置が仕込まれていて、友人が手元のボタンを押すと、光の粒子が一粒だけ上の方に放たれるようになっている。そして、光の粒は、上の鏡に向かった後、上の鏡に反射し、下の鏡に向かい、そこでも反射し、永久に上下の鏡の間を行き来するのだ。

最後に箱に車輪をつけて、真っ直ぐなレールに乗せて、箱が移動できるようにしよう。図に表すとこうだ(図2):

図2:高さhメートルの箱トロッコに乗った友人。青い部分は鏡(厚みゼロとする)。赤い矢印はレーザーポインター装置から放たれた光の粒子の軌道(友人目線)。時刻ゼロ(time=0)に下の鏡から放たれ、時刻t’(time=1t’)に上の鏡に到達する(あくまでも友人目線)。c(小文字)は光の速度。

今度は箱をレールの上を一定の速度で走らせた状態で同じことをやってみよう。友人には箱の中から同じ手順を行ってもらい、その一連の出来事を我々は箱の外から、レールから離れた一定の場所から一連の出来事を観測しよう。

箱トロッコに乗った友人が左の方からこちらへ向かってやってくる、我々の目の前を通過するちょっと前にボタンを押してもらい、下の鏡から光の粒子を一個放出してもらう。我々の目の前を通った瞬間に光の粒子が上の鏡に反射する。箱トロッコはさらに右に進み、光の粒子は下の鏡に到達する。この一連の出来事を図にするとこうだ:

図3:友人を乗せた箱トロッコがレールの上を左から右へ移動するのを我々は外の定位置から官房する。赤い点線はレーザーポインターから出た光の粒子の軌道(我々目線)。ABC(大文字)は位置を表す。小文字のcは光の速度を表す。注:ここでは我々からレールまでの距離はないものとする。

一つ、ここで知っておかないといけない事実がある。それは「光の速度はどこから見ても一定である」ということだ。キーワードはこの「どこから見ても」の部分だ。移動している箱トロッコに乗っている友人から見た光の速度と、我々が箱の外の一定の場所から見たその同じ光の速度と、まったく同じなのだ。

箱トロッコが例えば時速100キロメートルで進んでいて、友人がトロッコの移動方向に時速100キロメートルの球を投げたとしよう。友人からは玉はそのまま時速100キロメートルの速度に見えるが、移動していない我々から見たらその球は箱トロッコのスピードが合わさって時速200キロメートルで飛んでいるように見えるだろう。光は違うのだ。友人目線からも、我々目線からも同じ速度だというのだ。これは一体、どういうことなのか?

光はどこからどう測っても、常に一定なのだ。納得できなかった学者はたくさん居た。実際、19世紀の有名な実験(マイケルソン・モーリーの実験)では、物理学者のアルバート・マイケルソンとエドワード・モーリーはそれを否定するために非常に高い精度の実験を行なった。どんなに精度を上げても、失敗に終わった。結果「光の速度はどこからどう測っても一定」ということが明らかになったのだ。そしてそれは紛れもない事実なのだということを物理学者たちは受け止めた(注:「一定」というのは同じ媒体の場合。真空での光速が上限値、空気や水の中など、物質の中を通る際の光速は減速する)。

そこでアインシュタインは思いついた:「光の速度はどの視点から見ても一定なのはまぎれもない事実だとすると、今まで一定だと思われていたものが一定ではないのではなかろうか?」

我々目線から見た箱トロッコ(図3)を見てみよう。箱トロッコは一定速度vで進むとしよう。まず光の粒子が下の鏡の方から放たれた点をAと呼ぶ。そこからある一定の時間tが過ぎると、箱トロッコの下の鏡は我々の目の前の点Bに到着している。そしてちょうど同じ頃に光の粒子は上の鏡の点Cに到着している。

ABの長さは箱トロッコが移動した距離なので、vtである。BCは箱の高さなので、hメートルだ。ACは我々から見た光の通ってきた道なので、光の速度c × 箱トロッコがその距離を移動する時間tである。角度ABCは直角なので、ABCは正三角形。つまりピタゴラスの定理が成立するので:

  AC2 = AB2 + BC2  (1)

これらの距離を我々目線の時間と速度に書き直すとこうなる:

  (ct)2 = (vt)2 + h2  (2)

箱の中にいる友人に戻ってみよう(図2)。光の粒子はAで放たれ、C(大文字)に到達する時間t’(ティーダッシュ)を測ってもらう。光の速度は同じc(小文字)であるし、箱の高さは同じhメートルである。箱の中では:

  ct' = hメートル  (3)

ということになる。

式(2)のhを式(3)で書き直すと:

  (ct)2 = (vt)2 + (ct')2
図4:(左)友人目線の箱トロッコ。(右)我々目線で見える正三角形ABC。ABCのそれぞれの辺の長さ(距離)を(速度)×(時間)に書き直すと、箱トロッコの移動する距離 AB = vt、我々目線から見た光の移動距離 AC = ct、箱トロッコの高さ BC = h を友人目線の光の移動距離 h = ct’ で表す。

t2をまとめると:

  t2 (c2 - v2) = c2 t'2

等式の両側をc2で割ってt’2を解くと:

  t'2 = t2 (c2 - v2) / c2

カッコの中身の(c2 – v2)をc2で割って簡潔にすると:

  t'2 = t2 (1 - (v/c)2)

両側を二乗ルートすると:

  t' = t √(1 - (v/c)2)

最後にtで解くと:

  t = t' / √(1 - (v/c)2)

と、いうことは、我々が測った時間tは、友人が測った時間t’の(1 / √(1 – (v/c)2))倍も違うということだ。

√1 = 1なので、1から(v/c)2を引いた数は1よりも小さく、そのルートも1より小さい。

  例1:箱トロッコのスピード v = 0.99c (光の速度の99%、かなり早い)の場合、t' を計算すると:
  t' = t √(1 - (0.99)2)
  t' = t √(1 - 0.9801)
  t' = t √0.0199
  t' ~ 0.141t
  t ~ 7.089t'

  例2:箱トロッコのスピード v = 0.5c (光の速度の半分、かなり早い)の場合、t' を計算すると:
  t' = t √(1 - (0.5)2)
  t' = t √(1 - 0.25)
  t' = t √0.75
  t' ~ 0.866t
  t ~ 1.155t'

  例3:箱トロッコのスピード v = 0.0001c(光の速度の1万分の1、それでも秒速30キロメートル、地球の太陽周回スピードほど)の場合、t'を計算すると:
  t' = t √(1 - (0.0001)2)
  t' = t √(1 - 0.00000001)
  t' = t √0.9999999
  t' = 0.99999995t
  t = 1.00000005t'

結果:箱トロッコの時間の流れt'は、箱トロッコのスピードが光の速度に近ければ近いほど、我々から見た場合の時間の流れtより少ない(遅い)。

つまり箱の中にいる友人の測った時間t’は、我々が測った時間tよりも小さい(短い)ということになる。逆にいうと、我々が測った時間tは、友人の時間t’よりも長いということだ。つまり、t’ < t。

なんということか。我々から見たら、箱の中の友人の測った時間が少ないという結果だ(つまり我々から見たら箱の中の時間の流れが遅い)。

時間の流れが違うということは移動した距離も違う。箱トロッコの移動距離ABは、我々からしたら当然vtなのだが、箱トロッコの中の友人にはvt’なのだ。つまり、vt’ < vtなので、我々の測った箱の移動距離ABも、箱の中から見た場合は距離が短いのだ。

結論はこうだ:時間も空間(距離)も見ている人によって違う、つまり「相対的」なのだ。

光の速度は常に一定だとすると、時間と空間はひとつの「時空」として考えられる。そして「時空」は歪むものである、と、アインシュタインは考えた。これを特殊相対性理論と呼ぶようになった。

補足:箱トロッコの速度vが光速cに達してしまうと、v/c = c/c = 1になり、ルートの中身はゼロになって等式が成立しなくなる。vはcに限りなく近づくことは許されても、cに到達してはならない。是非考察してみて。

特殊相対性理論と一般相対性理論の違い

一般相対性理論を数学的に説明するには「テンソル」や「エネルギーモーメント」などのややこしいものが出てくるので、この記事で説明するのは無理難題(というか不可能)なのでやめておくとして、ものすごく簡単な説明だけに留めておく。

特殊相対性理論の次にアインシュタインは考えました:「重力」(=万有引力、全ての物質が持つ引っ張る力)も「加速」(=速度の変化)も同じなのではないか、と。そしてまた思考実験をしてみた。

今度はエレベーターのような箱を想像して、その中に乗ってみよう。箱の中からは外が見えない。でも今は地球上にいるので、地球の重力によって下に引っ張られて、中でも立っていられる。

そしてエレベーターの箱ごと突然テレポートする。今度は地球から遠く離れた宇宙空間にエレベーターの箱があると想像してみよう。そこでは無重力状態になりエレベーターの中のあなたは上も下もわからず、中を浮いている。あなたは箱の中から外は見えないので、エレベーターもろとも「自由落下」していると勘違いしてしまうかもしれない。

それはさておき、今度はエレベーターの外側の底の面に取り付けてあったロケットエンジンが噴射して、エレベーターが加速していく。中に浮いていたあなたは内側の底に叩きつけられるでしょう(あんまり加速度が強いと痛いが)。エレベーターが加速中、あなたは箱の中で立てるようになるでしょう。外が見えないので、あなたは重力のある地球に戻ったのかもしれないと勘違いをするかもしれない。要するに、「重力」も「加速」も勘違いしてしまうだろう、というものだ。

「加速」を続けると、やがて光の速度に近づいていく。近づくけど光の速度には決して到達しない(無限のエネルギーが必要なので不可能)。そして詳細を全部すっ飛ばして、まとめていくと、つまりは「重力」=「加速」=「光の速度が関係してくる」=「相対性理論が関係してくる」=「時空の歪み」なのだ。「重力」と「時空の歪み」が密接に関わっていることを、アインシュタインは解き明かしたのだ。これが、いわゆる一般相対性理論と呼ばれるものだ。一般相対性理論は特殊相対性理論の延長線上にあるのだ。

IAU会員になりました!

祝!念願の国際天文学連合の会員(ジュニア・メンバー)になりました。
スペイン傘下です。

とりあえずのアフィリエーションは以下の通りです:

そして以下のIAU活動で貢献していく意向です:

  • Office of Astronomy for Development (OAD) (発展のための天文学)
  • Office for Astronomy Outreach (OAO) (天文学アウトリーチ)
  • Office of Young Astronomers (OYA) (ヤング・アストロノマーズ)

これからも、万国共通である天文学を橋架けに、世のため人のため、頑張ります!